戸籍には「転籍」と言って、戸籍上の本籍地を移動させる手続きが存在しています。
この記事では、戸籍の転籍の手続きについて行政書士が分かりやすく解説していきたいと思います。
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転籍とは
まずは転籍の仕組みについて確認を。
転籍とは戸籍法に基づく戸籍上の本籍地を移転させる手続きのことです。
「転籍届」を提出することにより、転籍を行うことが出来ます。
「戸籍法」第十六節 転籍及び就籍第百八条 転籍をしようとするときは、新本籍を届書に記載して、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が、その旨を届け出なければならない。
本籍地とは
本籍地とは、戸籍が保管されている市区町村のことです。
住んでいる場所である「住所」や「居住地」とは異なりますので注意が必要です。
本籍地の場所は、基本的には両親と同じ場所となります。
結婚や分籍などで過去に戸籍の変動があった場合は本籍地の場所は異なっている可能性が高いです。
転籍の手続き方法
転籍を行うためには「転籍届」という指定の用紙を記入し、定められた場所に提出をしなければなりません。
ひとつずつ確認してみましょう。
転籍届の提出先
転籍届は、以下のいずれかとなります。
- 転籍者の本籍地がある市区町村役場
- 転籍地の市区町村役場
- 届出人の住所地の市区町村役場
上記以外の市区町村役場では受理されませんので注意しましょう。
転籍届の記入方法
本籍
現在の本籍地を記入します。
住所地ではありませんので気を付けましょう。
筆頭者の氏名
戸籍筆頭者の氏名を記入します。
届出人ではなく、筆頭者の氏名ですので気を付けましょう。
新しい本籍
変更後の本籍地を記入します。
こちらも住所ではなく本籍地ですので注意が必要です。
同じ戸籍にある人
戸籍に存在する全ての人物の氏名と住所を記載します。
こちらには居住地の住所を記入します。
転籍と同時に住所が変更になる場合は、新住所を記入しておきましょう。
また、後ほど詳しく説明しますが、転籍は戸籍単位となりますので戸籍に入っている人物は全員本籍地が変更することになります。
夫だけや、子供だけといった個別での転籍は出来ないことになります。
届出人
筆頭者と配偶者の氏名を記入します。
署名と押印は必須となり、それぞれ別の印鑑で押印する必要があります。
配偶者がいない場合は筆頭者の氏名のみで問題ありません。
届出人は筆頭者と配偶者以外の人とすることは出来ません。
転籍届の持参
転籍届は原則として届出人である筆頭者もしくは配偶者とにより行います。
届出人による署名と押印がある場合に限り、届出人以外の人が持参することは可能です。
その場合は持参人の身分証明書を持参しなければなりません。
転出届の必要書類など
転籍届1通
転籍届は全国共通ですので、インターネットからダウンロードすることも可能です。
ただし、届出人双方の署名押印が必須です。
戸籍全部事項証明(戸籍謄本)1通
同一市区町村内での転籍の場合は必要ありません。
例)東京都港区1-1から東京都港区2-2へ転籍する場合など
届出人の印鑑
届出人に配偶者がいる場合は、筆頭者と配偶者の2つの印鑑が必要となります。
スタンプ印は不可ですので注意が必要です。
本人確認書類
身分確認を行いますので、持参人は本人確認書類を持参するようにしましょう。
転籍届の注意点
転籍をする際はいくつか注意事項がありますので確認してみましょう。
転籍は在籍者全員で行われる
転籍は戸籍の本籍地を移転させる手続きとなります。
そのため、戸籍に氏名のある在籍者は全員本籍地が変更となりますので注意しなければなりません。
配偶者がいる場合は配偶者と同時に、配偶者と子供がいる場合は配偶者と子供も同時に本籍地が変更となります。
住所に変更はない
本籍地の変更によって住所地は変更されません。
あくまで戸籍を保管する市区町村の場所が変わるだけですので注意しましょう。
子供だけの転籍は出来ない
子供だけが転籍をすることは出来ません。
この場合は「分籍届」の提出により両親の戸籍から離れる必要があります。
筆頭者または配偶者が死亡している場合
生存している片方のみによって転籍を行うことは可能です。
ただし、死亡している方は新しい戸籍に記載されません。
筆頭者または配偶者が死亡している場合
在籍者は転籍を行うことは出来ず、分籍により本籍地の変更を行うことになります。
この場合も死亡している両者は新しい戸籍に記載されないことになります。
20歳以上であれば分籍をすることが出来ます。
転籍のメリット
好きな場所を本籍地と出来る
本籍地は日本国内であればどこの場所でも指定することが出来ます。
たとえば「皇居」「富士山山頂」「東京ディズニーランド」といった名所にも指定することが出来ますので、純粋な好みとして好きな場所を選ぶことも可能です。
戸籍の取得が楽になる
戸籍の取得は本籍の市区町村役場へ請求しなければなりませんので、本籍地を住所地と同じにすることで戸籍の取得が楽になります。
本籍地が遠方の場合は現実的には郵送請求するしか方法がありませんが、住所地と同じであれば実際に窓口へ行くことにより請求が出来ますので、手続き自体は遥かに楽になります。
一部の記載事項がなくなる
転籍をした場合は、新しい戸籍が作られることになります。
その際、古い戸籍から新しい戸籍へ記載内容が引き継がれないものがいくつかありますので、離婚歴などを新しい戸籍の表記上から消したい場合に有意義なものとなります。
転籍する際に記載されない項目
- 離婚に関する事項
- 離縁に関する事項
転籍する際に記載される項目
「戸籍法施行規則」第三十九条 新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者については、次の各号に掲げる事項で従前の戸籍に記載したものは、新戸籍又は他の戸籍にこれを記載しなければならない。一 出生に関する事項二 嫡出でない子について、認知に関する事項三 養子について、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項五 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項六 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの七 日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
ただ、これらはあくまで新しい戸籍の表記上で記載されなくなっているだけです。
除籍謄本などを取得することで離婚歴などを確認することは可能なので注意しましょう。
転籍のデメリット
戸籍取得の複雑化
一度や二度の転籍であればそこまで戸籍取得は複雑になりませんが、引っ越しにあわせて何十回も転籍を行うとそれだけの数の戸籍謄本と除籍謄本が誕生することになります。
戸籍というのは請求を一か所の本籍地で行うことは出来ませんので、転籍の数だけ戸籍謄本または除籍謄本を取得していかなければならないことになります。
人生でそう何度もすべての戸籍を取得する機会はありませんが、相続時などで戸籍が必要になった場合はそれだけ手数が増えることを理解しておかなければなりません。
まとめ
今回は戸籍の転籍についてを解説してきました。
転籍を何度も繰り返すと、戸籍をすべて取得する際に手間暇がかかってしまいます。
そのため、転籍をする際は目的がある場合や、引っ越しに伴う場合でも一度や二度程度にしておくとよいでしょう。